研究室の日常「アイスを懸けた、熱き仁義なき戦い編」

コンビニの冷凍庫を囲み、我々は無言のままアイスを見つめていた。
冷気の向こうに並ぶ、色とりどりのアイスたち。
しかし、これはただの買い物ではない。
たった1人の“敗者”が、他の全員分を買うという、過酷な使命を背負っている
話は少し前に遡る――
その日、我々はゼミ見学会を終え、真夏の太陽が照りつける中を歩いていた。
汗をぬぐいながら誰かがぽつりと、「アイス食べたいな」とつぶやいた。
するとB4のM氏が、何気なく言ったのだ。

「じゃんけんで負けた人が奢るっての、どうですか?」

それは確かに、軽い冗談のつもりだった。
だがM氏はまだ知らない。
この研究室では、冗談が冗談のまま終わらないことを――
そして、先生がこういうノリに微笑んで“容認”してしまうタイプであることを――
こうして始まった、11人のアイス争奪じゃんけん大会。
「ハーゲンダッツは対象外」という、ささやかな配慮はあったものの、選ぶアイスには各々のこだわりがにじんでいた。
冷気と緊張が漂う中、「最初はグー」の掛け声が響く。

「じゃんけん――ぽん!」

乾いた音とともに振り下ろされた拳。
その勝負は、あっけないほど早く、静かに幕を閉じた。
そして現在――
アイスでいっぱいになったかごを抱え、レジへと向かったM氏はぽつりとつぶやいた。
「これだけ買うと、なんか達成感ありますね……」
こうして、真夏の研究室にまたひとつ、新たな伝説が刻まれた。


執筆者:北原
ps:ゼミ見学会については次回の記事で詳しくお話ししたいと思います。お楽しみに