建築構造研究室による、査読付き論文や日本建築学会等への投稿論文はこちらからご覧ください。
本研究室では「査読付きの論文を修了までに1本」を目標として研究活動に取り組んでいます。
鉛直免震
既往の免震技術が持つ課題のひとつに鉛直地震動への対応があげられます。従来の免震装置は鉛直動に対する考慮がされておらず、水平動のみを対象とするものがほとんどです。
現状の設計においても、考慮されているのは水平動のみです。
近年の地震では、1Gを超える大きな鉛直動も度々観測されています。鉛直動の影響として、建物内の家具や機器等の移動・転倒といった挙動に影響を与えることなどがわかってきています。現在、大地震に対してより安全性の高いレジリエントな都市の実現に向け、「地震による被害ゼロ区域」と称した様々な研究が行われています。
上記を踏まえ、本研究室では以下のテーマで研究を進めています。
・パラレルリンク機構を用いた免震装置の開発
・免震性能や上部構造のパラメータが3次元免震システムの応答に及ぼす影響の把握
・鉛直動に対するダンパーのセミアクティブ制御
共同研究:国立研究開発法人 防災科学技術研究所
制振
1995年の兵庫県南部地震以降、制震構造の技術開発や普及が進んでいます。しかし、中低層の建築物に普及にはいくつかの課題が挙げられます。現状では、限界耐力計算やエネルギー法で履歴減衰の鋼材ダンパーのみを対象としていることなどにより、制震構造は中低層の建築物に普及が進んでいません。また、免震構造や耐震構造と比較して、建物としての性能目標や評価項目が統一されていません。
一方で、2011年の東北地方太平洋沖地震や2016年の熊本地震など、巨大地震が相次いで発生しています。これらの地震を含めて、建物の設計時に想定していた地震動に対して、継続時間や振幅レベルを上回る地震動が増え、近年注目されています。
上記を踏まえ、本研究室では以下のテーマで研究を進めています。
・エネルギー吸収の観点からの粘性ダンパーを用いた簡易設計法の提案
・制振建物の評価の定量化
・履歴ダンパーと粘性ダンパーを併用した、大振幅地震動に対する制震構造の効果的なダンパー配置の検討
風力発電設備支持物(風車)
近年では、地球温暖化を主とした環境問題への対策の一環としてクリーンエネルギーに注目が集まり、風力発電もそのひとつです。2000年以降風力発電設備支持物(タワー)の導入量が国内外を問わず急速に増加すると同時に大型化、高層化が進んできています。
我が国日本における陸上の風力発電支持物は鋼製タワーが一般的に用いられていますが、これらは大型化による運搬面の困難さが課題となっています。また、現在の日本において、常時振動状態であるタワーの金属疲労が問題となっています。一方でタワーの供用期間は20年とされ、継続利用のための安全性を定量評価する手法が確立されていません。
上記を踏まえ、本研究室では以下のテーマで研究を進めています。
・複合構造化(PC造およびS造)が地震応答性状に及ぼす影響の把握
・ハイブリッドタワーの最適化
・風荷重に対する有効的なTMDの質量や設置位置の提案
・北九州市に設置されている風力発電設備の長期実測に基づく余寿命予測手法の提案
共同研究:株式会社構造計画研究所
株式会社 北拓
その他の研究
発泡ポリスチレン(特殊材料)を用いた最適化
2000年の建築基準法の性能規定化により、従来の材料や寸法などの仕様規定のみならず、目標とする構造性能を確保すればその構造方法を認めるとされています。これによって、特殊材料を用いた建築の技術開発が活発化しました。その中でも発泡ポリスチレンは、軽量かつ断熱性や施工性にも優れているといった特徴があります。そのため、多雪地域や農業用途を中心に建設が進んでいます。
本研究室では、発泡ポリスチレンを材料とする既存の構造体について最適化手法を用いて研究を行っています。
共同研究:ジャパンドームハウス株式会社
セルフビルド可能な仮設建築物の構造性の評価 (特殊材料)
日本国内において、屋内外の小規模なイベントや個人の敷地内など、仮設建築物を利用する機会が数多くあります。これらの仮設建築物は、重量が軽く手作業による施工が可能なものも多く、自然災害の被害を受けた被災地においても、住民自らの手で建設することが可能な応急仮設建築物として利用される事例もある一方で、応急仮設建築物に代表される小規模建築物は、一般に建築基準法第20条第四号に該当し、構造計算の必要性が明示されておらず、その構造性能が必ずしも明確になっていない部分もあります。
本研究では、セルフビルドによる施工や解体、リユースが可能であり、拡張性のある規格化された工法の開発を行う。「モクタンカン」を用いた工法に着目し、その工法を利用した仮設建築物の構造性能評価を行うことで、課題解決を図ろうと考えています。
生体反応計測を用いた耐震性能の感覚評価
近年、建物の安全性の確保を前提に、建物の中の人に対する不安度評価に対するニーズが高まってきています。構造安全性については研究によって評価法が確立されていますが、不安度については評価基準が確立されていません。
現在、建築構造分野ではアンケートを用いて感覚評価を行っていますが、課題も存在します。そこで、生体反応に着目し、アンケートによる評価と生体反応による評価を組み合わせることによって、より詳細な感覚評価が可能であると考えています。
以上のような背景から、脳波や心電図などの生体反応を用いて、建物の中の人の地震に対する不安度を定量的に評価することを目的に研究を行っています。
これまでの研究
家具を用いた耐震性能評価(2020年度)
地震による家具や什器の転倒などの室内被害での死傷者が少なくありません。設計においては建築物自体の安全性は要求されていますが、建築物のレジリエンス向上には室内空間の機能保持も重要となってきます。
本研究室では、家具や什器の転倒現象とその危険性について明治大学の振動台を用いて実験を行い定量的に把握し、転倒限界式の提案を目的として研究を行っています。
共同研究:国立研究開発法人 防災科学技術研究所
低コスト建築物の構造性能評価(煉瓦基礎)(2021-22年度)
2019年日本国内でプロポーザルが開催された「ミャンマー超低コスト住宅・パイロットプロジェクト」において実施案に選定された案の共同研究の一つです。ミャンマー郊外ではセルフビルド住宅が多く占められていますが、日常的な住居内の温熱環境の改善に加え、ハリケーンや水害、地震等の自然災害によって倒壊する危険性が極めて高いため、一定水準以上の構造安全性の確保が課題となっています。
本研究室では、有孔煉瓦基礎の載荷実験を行うことで組石煉瓦の基本的な構造性能の把握を初めとする、低コスト住宅の実用化に向け、上部構造の構造性能評価も行なっています。
共同研究:明治大学理工学部建築学科 建築環境デザイン研究室(樋山恭助 教授)
明治大学理工学部建築学科 耐震構造研究室(晋沂雄 准教授)
研究活動で使用するプログラム・アプリ
- k-SHAKE+
- k-WAVE
- MATLAB
- MicroLabBox
- Midas iGen
- RESP(RESP-D,RESP-F3T,RESP-M2)
- Grasshopper(Rhinoceros)
- SS7
など