修士論文

2022年度

  • シュタイナー角配置を活用した最適化設計手法の考案
    本研究は、自然界に存在する形状のひとつであるシャボン膜の結合システムとシュタイナー点に着目し、建築構造部材への適用を試みる挑戦的研究である。近年多様化する建築形態に対して新たな部材配置方法を提案するシュタイナー角配置が鉄骨構造として持つ力学特性を数値解析により明らかにし、その特性を活かした設計方法の考案を目的としている。単層シュタイナー角配置では、既存幾何学配置と比較して柔らかい形状であり、軸力系の架構であることを確認している。その活用例として三次元トラス架構を提案し、シュタイナー角配置を下弦材として用いることで引張力を作用させ、面外剛性を高めている。最後に、最適化設計ツールを用いることで意匠デザインと構造形態創生が同時に行える設計の一例を示している。
  • 回転慣性磁気ダンパーのリアルタイムハイブリッド実験による鉛直動に対するセミアクティブ制御に関する研究
    本研究では、鉛直地震動に対する回転慣性磁気ダンパーを用いたセミアクティブ制御について論じている。筆者の先行研究より、ダンパーへの印加電流が減衰力として発現するまでの時間遅延に課題があった。これは、印加電流の切替え回数の平均が1秒当り約9回と多く、時間遅延が応答に悪影響を及ぼすと考えられたためである。本研究はまず、ダンパーの特徴である慣性質量と磁気減衰が効果的に作用する外乱の周期帯を明らかにし、切替え回数がある程度少なく収束する制御則を提案している。次に、時間遅延を含む種々の不確定要素に対し、提案制御則の応答低減効果と安定性を解析検証している。また、実機を用いたリアルタイムハイブリッド実験により、解析で反映し難い不確定要素の影響が軽微であることを示した。
  • 浮揚免震システムの地震時応答に関する研究 ー重量偏心の影響と水平長周期化の効果ー
    近年の相次ぐ巨大地震の発生とその被害の経験から、より高度な安全性を実現するため、レジリエントな都市の実現構想研究が進められている。水平免震は高性能な免震が可能である浮揚方式の開発が進められている一方で、鉛直免震は改良が必要となっている。これまでの鉛直免震システムの開発では性能試験は数多く行われているものの、その要求性能を定量的に示した研究は少ない。そこで、本研究では観測鉛直地震動の特性に基づき、浮揚免震システムの地震時応答を解析的に分析し、鉛直免震の要求性能を明らかにするとともに、重量偏心と塔状比が地震時応答に及ぼす影響を定量的に示し、応答増加が軽微である閾値を提案している。また、水平長周期化により、ロッキング応答が小さくなる傾向も明らかにしている。
  • ダイナミック・マスを用いた制振建物の簡易設計図表の提案 ー応答低減領域における質量比・振動数比の影響ー
    目的 実建物へダイナマック・マス(以下D.M.と称す)を用いる際には収斂計算により制振ダンパー量を決定する必要があり、基本設計段階において人為的負荷が大きい。これを踏まえ、本研究では基本設計段階で簡便にD.M.の必要量の目安を決定できる簡易設計図表の提案を行うことを目的とした。
    成果 時刻歴応答解析結果を基に、D.M.の量および取付け剛性が建物の応答に与える影響を明らかにし、取付け剛性の値が建物の応答低減に与える影響が大きいことを示した。その後、考察結果を基に、取付け剛性の値と建物の応答倍率の関係から応答低減可能な領域を示し、解析結果の平均値を基に応答予測線の提案を行った。最後に、得られた応答低減可能な領域と応答予測線を用いて簡易設計図表の提案を行った。
  • 複合構造風車支持物における応答スペクトル法に基づく地震応答評価と応答補正手法の提案
    目的 風力発電設備支持物の地震に対する設計には時刻歴応答解析が用いられるが、ファンドファームを構成する基数が多いため、簡便な手法として応答スペクトル法の確立が求められている。本研究では、鋼製タワーとPCタワーから成るハイブリッドタワーに関して、鋼製タワーを基に提案された既往研究による減衰補正係数を、ハイブリッドタワーに適用させる手法を提案することを目的としている。
    成果 鋼製タワーとハイブリッドタワーの固有値の違いに着目し、応答補正手法を提案した。時刻歴応答解析の結果と比較することで、提案した応答補正手法の妥当性を確認した。PC比率20~50%において、提案した応答補正手法がハイブリッドタワーの地震応答性状を概ね評価できることを示した。
  • 実測に基づく風力発電設備支持物の応答制御に関する研究 -多重TMDが制振効果に与える影響-
    目的 風力発電設備では倒壊事故の原因ともなる日常的な振動により、タワー部の金属疲労が問題視されている。本研究では、多重TMDを用いた制振による応答低減を目的としている。
    成果 実際の風力発電設備タワー部の振動特性を考慮するために実測を行い、実測データを基にした時刻歴応答解析により多重TMDの制振効果と累積損傷度抑制効果を検証した。実測データを用いた解析においても多重TMD の制振効果が確認された。また、TMD が応答性状に与える影響を明らかにし、新たにストローク制御を行うことで先行研究に比べて半分以下となる総質量比4%の2重TMDの高い制振効果を示した。加えて、累積損傷度評価を行い、多重TMDにより、累積損傷度抑制効果が十分に見込めることを示した。
  • 粘性ダンパーを用いた中低層建築物におけるエネルギー法に基づいた評価法の提案
    目的 本研究では、現行エネルギー法において、適用対象外である粘性ダンパーによる制振効果をエネルギー吸収の観点からエネルギー法に反映する手法の提案を目的としている。
    成果 粘性ダンパーを付加した制振時と非制振時における層間変形の差分と耐力との積が粘性ダンパーのエネルギー吸収量に該当することに着目し、地震動に対する粘性ダンパーのエネルギー吸収割合や繰返し数の観点から、エネルギー法に基づいた評価手法の提案を行った。提案手法による評価と時刻歴応答解析結果の比較により、提案手法の妥当性と適用範囲を検証した。本研究の提案評価手法は、粘性ダンパーによる付加減衰が3%程度以上であれば、時刻歴応答解析による最大応答層間変形を包絡することが可能である。